【フリー台本の部屋】声劇台本

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以下台本になります。

タイトル
『声が聴きたい』

男1:女1:男女不問1(3人用台本)
〜約30分台本〜

【登場人物】
《魔女》国一の魔力を持つ魔女。魔女狩りの際国から身を隠す形で深い森の奥でヒッソリと暮らしている。
《フクロウ》魔女に助けられてからずっと一緒にいる梟。魔女とお話するのが好き。
《男》森で出会った男。ある目的があると言うが…。

******************

フクロウ:「ワタシはフクロウ。名前は…ああ、そういえば付けてもらってはいなかったな。いつも『君』とか『なぁ』とか呼ばれていた気がするよ」

フクロウ:「そういえば、彼女の名前も知らないな。別段困ることもなかったけれど…いや、彼女の名前くらいは聞いておけばよかった」

フクロウ:「一度くらい、この声で呼んでやればよかった」

0:数百年前

魔女:「やぁ、おはよう。気持ちのいい朝だね」

フクロウ:『…おはよう。ワタシが夜行性と知っていてそのセリフかな?』

魔女:「おっと、君は夜行性だったね。もしかして今やっと寝たばかりだったかな?」

フクロウ:『まったく、相変わらず勘だけは鋭いなぁ…その通りだよ。少し前にやっと寝始めたところだったのにたった今起こされた…ふぁ…』

魔女:「ふふっ、眠そうな顔も可愛いね」

フクロウ:『そうだろうとも。フクロウは起きている時のまんまるお目目も可愛いが、眠くてもはや閉じてしまっている顔も、それはそれはキュートなのだよ』

魔女:「おっと、その長いホーはもしかして起こしてしまった私への小言かな?」

フクロウ:『…今日も、貴女にワタシの声は届かなかったみたいだね』

フクロウ:ワタシは彼女の肩に飛び乗ると、その頬に自分の柔らかな羽をすり寄せた。

魔女:「おや、小言を言いつつも寄ってきてくれるなんて…君は本当に可愛いな」

フクロウ:『…小言なんて言ってないよ。貴女と話すのが楽しいだけさ』

フクロウ:彼女はこの国一の魔力を持つ魔女だ。その昔魔女狩りなるものも行われたが、国の勢力を全て結束しても彼女の魔力には敵わず、彼女自身が国から身を隠す形で、今はこの深い森の中でひとり暮らしている。

フクロウ:ひとりといっても、彼女の家にはワタシを含め沢山の動物達がいる。猫や蛙や蛇や犬。そして彼女は動物達の声を聴くことが出来た。

フクロウ:ワタシの声を、除いては。

魔女:「しかし、どうして君の声だけ聴こえないんだろうなぁ。私はこんなにも君と話がしたいのに」

フクロウ:『ワタシも不思議でならないよ。貴女ほどの魔力を持ってしてもワタシの声が聴こえないなんて』

魔女:「うーむ、もしかしたら君がいた場所に原因があるのかな…よし、久しぶりに行ってみるか。おいで」

フクロウ:彼女はマントを羽織るとワタシを肩に乗せて歩き出した。

0:ーー

魔女:「さ、着いたよ。ここが君のいた場所だ。もしかしたら君は覚えてないかもしれないな。かなり酷い状態だったから…」

フクロウ:着いた場所は森の奥の一角だった。

魔女:「私が君と初めて会ったのがここなんだよ。私は結界を強化するために森の中を歩いていた。するとここで、今にも死にそうな状態の君を見つけた。私はその場で治療しようとしたんだが、何故か癒しの魔力が全く効かなかったんだよ」

魔女:「まぁとにかく治療が最優先だと思って、ここの結界を強化した後、君を家まで運び、薬草で治療したんだ」

フクロウ:確かに、彼女との出会いは彼女の家…だったと思う。目を覚ました時ワタシは暖かい部屋の、ふかふかな布団の中にいた。

魔女:「君は何故そんな状態でいたのか、覚えていないか?」

フクロウ:彼女と出会う前のこと…気づいたら当たり前のように彼女の側にいたから、そんなこと考えもしなかった。酷い状態であったのなら覚えていそうなものだが…あまりにも衝撃的すぎて忘れてしまったのだろうか?

魔女:「…覚えていないか。きっとあまり良い記憶でもないだろう。忘れたままでいい。すまなかった」

フクロウ:『…貴女が気にすることじゃないよ』

魔女:「…そういえば、あの時は君を助けることで頭がいっぱいだったが一体誰があんなことをしたんだろう……もし誰かわかったら言い訳を聞く間も苦しむ間も与えず、この炎で骨まで燃やし尽くしてくれる」

フクロウ:『き、気持ちは嬉しいけどあまり無茶はしないでくれよ…』

フクロウ:こんなに怒る彼女を見たのは初めてだ。滅多に怒らない温厚な彼女が、ワタシのためにこんなにも怒りを露わにしてくれている…不謹慎かもしれないが、それだけワタシのことを大切に思ってくれているのだと、自惚れてもいいだろうか。

魔女:「……一度結界を解いてみるか」

フクロウ:『えっ!?』

魔女:「私の結界はこの国一強力だ。結界を強化すると外から人が入ってくることはまずない。だが、もし君をこんな目に合わせたやつがまだこの森をうろついているのならば…結界を解かなければ一生会うことは出来ない」

フクロウ:『……』

魔女:「物は試しだ。誰とも会わなければまた結界を張ればいい」

フクロウ:そう言うと、彼女はこの場所の結界を解いた。景色は何も変わってはいない。が、そこに満ちていた空気は変わった。彼女とワタシは暫くジッと前を見据えていた。サワサワと風に揺れて葉の擦れる音だけが響いている。

フクロウ:そのままどれくらいの時間が経っただろうか。そんなに長くなかったと思うし、それほど短くもなかったと思う。しかし、その間、彼女は微動だにしなかった。何かを待っているかのように、ジッと前を睨みつけている。

0:ガサッ

フクロウ:『っ!』

男:「…っ!?うわぁっ!!」

フクロウ:唐突に葉っぱを踏む音がして、木の影から男がひとり顔を出した。男はこちらを認識すると驚いた声を上げて、そのまま地べたに座り込んだ。

男:「え!?ひ、人!?」

魔女:「……あんた、この森に来たのは何回目だ?」

男:「え!?あ、えっと…な、何回か来たことがあります…その、ま、魔女を!探してて…」

魔女:「…何故魔女を探している」

男:「それは…僕の父親が昔、この森で魔女に殺されたって聞いて…あ、でもだからって復讐しようとかそういうんじゃなくて!その…父は最後、どんなだったのか…知りたくて…」

魔女:「……」

男:「父は国でもそこそこ強い力を持つ魔法使いでした。だから当然、魔女狩りにも駆り出されて…僕も母さんも本当はそんなこと、して欲しくなかった…父の魔法は、人を傷つけるための道具なんかじゃないのに!」

魔女:「…そうか」

男:「…あなたは、魔女…なんですか?」

魔女:「……そうだ。私がきっとお前の探している魔女だろう」

男:「!!」

魔女:「だが、残念ながらお前の期待には答えられない。何故なら、私は魔女狩りの時、国中の兵士や魔法使いを五万と殺した。その中の一人など…覚えていない」

男:「……そう、ですか…」

魔女:「…その代わりと言ってはなんだが、私の家に招待しよう。ハーブティーくらいは淹れてやる」

男:「あ……ありがとう、ございます…」

魔女:「だがその前にひとつだけ答えてくれ。お前はこの私の肩に乗るフクロウに、見覚えはあるか?」

男:「………どこにでもいそうな梟ですね。同じような梟は見たことあると思いますが、あなたの肩に乗っている梟が僕の見た梟と一緒かと聞かれると…分かりかねます」

魔女:「………そうか。着いてこい」

フクロウ:男は黒髪で体は細長く、大きなリュックを背負っていた。最初はナヨナヨしているように見えたのだが、彼女がワタシのことを聞いた時一瞬眼光が鋭くなったような気がした。本当に一瞬だったので見間違いかもしれないが…。

0:--魔女の家

魔女:「ハーブティーだ。良かったら飲んでくれ。毒は入れてない。まぁ、信じるか信じないかはお前次第だが」

男:「…ありがとうございます。せっかくなので頂きますね」

魔女:「おっと、向こうの窓を閉めるのを忘れていた。少しここで待っていてくれ。すぐに戻る」

男:「わかりました。お構いなく」

魔女:「あの男に見覚えは?あれば羽を、なければクチバシを私の頬に」

フクロウ:『…見覚えはない…と思う』

魔女:「クチバシ…ないか。ありがとう。だが気をつけろよ。まだ怪しい人物であることに変わりはない」

フクロウ:『…わかったよ。ありがとう』

魔女:「ふふっ、いい子だね」

魔女:「待たせたな」

男:「いえ!ハーブティーとっても美味しいです。ありがとうございます」

魔女:「外はもう暗いが…どうする?泊まって行くか?」

男:「え!?でも、迷惑じゃ…」

魔女:「別に私一人で住んでいるのだからかまわない。部屋も腐るほどある。そこの部屋を使うといい」

男:「あ、ありがとうございます!」

0:ーー

フクロウ:彼女は一体、どういうつもりであの男を泊まらせたりしたのだろうか。怪しい人間、それも魔法使いの息子を家に招き入れるなんて…時々彼女の考えていることがわからなくなる……いや、そもそもワタシごときに彼女の考えることがわかったことなどなかったな。

フクロウ:だからこそ、彼女と話がしたい。貴女は一体何を考え、何をしようとしているのか…ワタシが力になれることは何か、ないのか…。

男:「相変わらず、腑抜けてんなぁ」

フクロウ:『っ!?』

0:魔女が気配を察知し部屋へ駆け込んでくる

魔女:「貴様!何をしている!!」

男:「おっと、主役のご登場だ」

魔女:「…その中身は…私のフクロウだな」

男:「半分当たりだが半分ハズレだ。私のじゃない。コイツは俺達のだ。俺と親父が捕まえた…お前を釣るための餌だよ、魔女」

魔女:「……どういうことだ」

男:「薄々勘づいてるんだろ?あの日、コイツをズタボロにして森の中に放り出したのは俺と親父だ。コイツに魔力の効かない強力な魔法をかけてな」

魔女:「お前達にそんな芸当が出来るとは思わないがな」

男:「ハッ!その人を見下したような言い方が気にくわねぇ!確かにお前の力は国一かもしれねぇ。けどなぁ、俺の親父だって、魔法使いの中じゃ最高の力を持った人だったんだよ!」

魔女:「……」

男:「勿論、そう簡単に魔力の効かない魔法なんてかけらんねぇよ。これは、親父がいつかある目的を達成するために長い長い長い年月をかけて研究してきた魔法なんだよ」

魔女:「…ある目的?」

男:「…その前に教えてくれ。お前はコイツに魔力を使ったのか?そしてその魔力は…ちゃんと発動したのか?」

魔女:「……使ったが、発動しなかった」

男:「……ハ……ハハ…アハハハハ!!!」

男:「そうか!魔力は効かなかった…国一の魔女の魔力でも!つまり!!俺と親父の魔法のが上ということだ!!!」

魔女:「…全く、道理で聴こえないわけだよ。なぁお前様よ。私も素直に答えたんだ。あんた達の目的ってやつも教えておくれよ」

男:「ああ、そうだったな。いいぜ。教えてやるよ。俺はこの国一の魔女の心臓を手に入れて、死んだ親父を甦らせる。なぁ、この袋の中のヤツとあんたの心臓…交換してくれよ」

魔女:「……」

男:「勿論交換してくれるよな?あんたの大事な大事な大事な梟なんだろ?」

魔女:「何故フクロウをいたぶった?」

男:「何故って、あんたは動物に大層お優しいと聞いてな。目の前でズタボロになった動物が転がってりゃ治療するだろうと思ってね。更に魔力が効かないなら家に持ち帰るしかねぇ。梟にかかった魔法の気配を辿れば家がわかると思ったんだが…結界のせいで梟がいたところがわからなくなっちまった」

男:「だが、俺は毎日のように森を彷徨い、梟がいた場所を探した。そしてやっと辿り着いた!」

魔女:「わかった。もういい。喋るな」

男:「ぐっ…おい、言っておくが俺を殺そうとするなよ。そん時はこの袋が丸焦げになるぜ」

魔女:「火遊びが好きとは。奇遇だな、私もだ」

男:「ひっ!手から火が…おい!撃て!!」

0:ガウンッ(後ろから弾丸が放たれる)

魔女:「くっ、これ、は…」

男:「俺達魔法使いが研究に研究を重ねて作った対魔女の弾丸だ。効いてくれなきゃ困るぜ」

魔女:「…私の勘も、鈍ったものだ…。すまない。あとは、君に任せた」

男:「あ?どういう意味…っ、何だ!?」

0:袋から光が溢れ破れる

フクロウ:「……これは…」

男:「なっ!お前、何で人間に!?」

フクロウ:「…色々と言いたいことはあるが…貴様は今すぐ消えろ」

男:「なっ」

0:ゴウッ(一瞬で燃え上がり灰となる)

フクロウ:「…こんな力、ワタシにあってどうする。この力は、貴女のものでしょう」

魔女:「…ああ、やっと…やっと聴こえた…君の、声…」

フクロウ:「…なんで、こんなこと…」

魔女:「…ずっと、君の声が聴きたかった…私の魔力でならなんとかなる…そう思ってた…でも、君は、君の存在は……私の全ての魔力に変えても足りないくらい、尊いものなのだなぁ…」

フクロウ:「そんなわけ…」

魔女:「あるよ。君は私がいなければ、あんな目に遭わずに済んだのだから…すまなかった…私のせいだ」

フクロウ:「っ、それは!」

魔女:(被せて遮るように)「なぁ、君の声を…聴かせてくれよ…いつも、なんて私に話しかけてくれてたんだい?最期くらい…楽しい話をしよう…」

フクロウ:「……ワタシだって、貴女ともっと、もっと沢山話がしたかったよ。そうだなぁ、話せるのは嬉しいが、何故人の形になったんだろうか…」

魔女:「…はは…そんなの、簡単なことだ…私は、ずっと、君を抱きしめたいと思っていた…そして、抱きしめ返して欲しかったんだよ…」

フクロウ:「…まったく、ワガママなお嬢さんだ」

魔女:「…可愛い、お願いだろう?」

フクロウ:「…ああ、貴女はいつもワタシを可愛いと言ってくれていたけれど…貴女だってとびきり可愛いよ。ワタシの大好きなご主人様…」

0:魔女の横に座り、そっと抱え上げ、抱きしめる

魔女:「…ふふ…わたしも…きみが…だいす…」

フクロウ:「…本当に、バカな人だ。ワタシがいなければ…ワタシがそもそも貴女と出会っていなければ…こんなことにはならなかったじゃないか」

フクロウ:「自分だけ言いたいことを言って、ワタシには謝らせない…ズルい人だ。ワタシが貴女の話に乗らないわけがないじゃないか。いつだって、貴女と話すことが楽しくて楽しくて仕方なかったのだから…」

フクロウ:「…魔女の心臓…死者は蘇ったりしない。けれど、これがある限りクソな連中は何度でもやってくる」

0:魔女の心臓を取り出し、自分の胸に押し入れる

フクロウ:「っ…!?これは…貴女は…本当にずっと、ワタシの声を聴くためだけに自分の魔力を貯めていたのですか?こんな…」

フクロウ:彼女の何百年の思いがワタシの中に流れ込んできた。ワタシと出会ってから、自分の魔力を心臓に少しずつ少しずつ貯め、いつでも渡せるようにしていた。自分の魔力の、全てを。

フクロウ:「…ワタシは、貴女の傍でずっと何を見てきたんだ…いつかワタシの声を聴いてくれるだろうと…貴女の努力の上にあぐらをかいて…本当に…ワタシは…」

フクロウ:ワタシはフクロウ。人の形をしているがフクロウだ。もはや誰も信じられないような捻くれ者になってしまったが、腑抜け者であったワタシにはこれくらいの警戒心が必要なのだろう。

フクロウ:ここ数百年、誰とも話をしていない。誰かと話をしたいような、したくないような…ワタシは本当にバカだから、また誰かを不幸にしてしまうかもしれない。

魔女:『今の君なら大丈夫だよ。その足を一歩踏み出して、その優しい手を伸ばしてごらん』

フクロウ:「っ!ははっ、いよいよ幻聴まで聴こえてきた」

フクロウ:あんなにも自分が無力だと思ったことはなかったのに、彼女の声を、言葉を聴くだけで本当にそうなんじゃないかと思えてしまうから不思議だ。

フクロウ:「…ワタシも、貴女みたいに誰かを救うことができるかな」

フクロウ:貴女からもらったこの自由に動く手足と、強く脈打つ心臓で。貴女のように、今度こそ大切な誰かの力になりたいと、ワタシは思う。

END.