*後編の冒頭は、前編のあらすじを薬売りさんが語るように説明してくれます。その語り口調がとても綺麗なお声でテンポ良く小気味良い。つい聴き惚れてしまいます。
今回のモノノ怪の形は座敷童子。さて、このモノノ怪の真と理とは…?

*オープニング後から本編へ。
モノノ怪に殺された男を知っているのかと志乃に尋ねる薬売りさん。志乃は躊躇いつつも、男は自分を殺そうとしている大旦那様と奥様が差し向けた殺し屋だと話し始めます。
お腹の子が若旦那様との子であり許されぬ関係であると。
ここの薬売りさんの問いかけに志乃が答えながら真実が明かされていく演出も面白いですね。

*必死に話す志乃に被せて宿屋の女将は馬鹿にした様に話すシーンや興味なさそうにする番頭の徳治の表情も、それぞれのキャラクターの特徴が出ています。

*ここでドーンッと大きな音が。
慌てる女将は宿に何かあるならば宿から出てしまえばいいと襖を開けます。
しかし、襖を開けてもある筈の廊下は無く、同じ部屋が何部屋も続いているのみ。
鏡の様にずっと奥まで同じ部屋が続いている絵はこれまた圧巻です。不気味さ満点(笑)

*少し分かりにくいですが、並ぶ部屋の襖の色が徐々に赤くなっており、座敷童子が近づいてきているのがわかります。徳治にも女将にも乗っているのでひええってなりますね。
そして志乃の前にも座敷童子が。

「おっかぁ」

そう一言呟くと部屋が動き出し、志乃は倒れてしまいます。

*場面は変わり、横たわる志乃が何かの匂いを嗅ぎながら目を覚まします。そこは見たこともない部屋。
志乃の前に並ぶのは退魔の剣と並んで大事な薬売りさんの相棒、天秤!筆者はこの天秤のビジュアルといい動きといい大好きです。
見せ場はまだ先なので今はこれくらいで。

*志乃の傍らにだるまがいたと思いきや座敷童子が。さすがの志乃も驚いて悲鳴をあげてしまいます。
そして聞こえてきたのは人の声。
隣の部屋から聞こえる様で志乃はそっと襖を開けてみます。
そこには男と女が布団で笑いながら営む姿。アニメなのでハッキリとした描写はありませんが、顔に花が描かれた男女が笑い声をあげながらこちらを見る表現はとても怪しげですね。
前編の時も時々あったのですが、今回ハッキリと赤く細長い布が布団からまっすぐだるまへと伸びています。
最初なんだろうと思っていたのですが、赤い布は座敷童子の腹かけでした。
先程とは違う、部屋の真ん中に水があり、その更に中央に不思議な台がある部屋。
一体、この部屋は何なのでしょうか?

*ここから後半戦。
机の上にちゃっかり正座している薬売りさんと何とかしてくれと言う女将。
志乃だけが別の部屋にいて現れては消えるだるまに怯えています。
悠長なこと言ってないでと言う女将に対し、薬売りさんも意味ありげなことを言います。

「悠長に口を割らないのは、女将さんの方ですぜ」

薬売りさんの言葉遣いって場面によってかなり変わるので、丁寧かと思えば「ですぜ」という砕けた言い方もするので筆者的には急にくるとドキドキしてしまいます!心臓に悪い。

*ここら辺からカタカタ、チリチリンと天秤の鈴の音が聴こえ始めます。
そして渋々ながらも女将から明かされる、志乃がいた部屋の真相は。

「この、座敷は…供養のつもりで…」
「この宿は昔、女郎屋で!」

志乃がいた部屋の中央にあった台に座るのは、何年も前の若かりし女将さん。
声も若返り、この部屋は始末の部屋であったと言う。壁一面が、やや子の墓であると。

*場面は変わり志乃サイドへ。
襖の奥から志乃を呼ぶ声が。そこには若旦那様と自分の姿。「愛してる」と繰り返す若旦那。志乃は使用人だからと躊躇うも、それでも若旦那は夫婦になろうと言う。それならばと志乃は若旦那に言います。

「私、若旦那様のやや子が、お腹に…」

「え?…そうなんだ」

さっきまで目の前にいた若旦那は殺し屋の直助の姿に。

「どうせ金持ちなら、誰でもいい」

若旦那と志乃のシーンの時はちょっと寂しげな音楽だったのに対し、若旦那の「え?」から雰囲気が一変する演出に惹き込まれます。
改めて見てここのシーンゾッとしました。
大旦那様と奥様が差し向けたと思っていた殺し屋は、実は若旦那が差し向けたものだったなんて…酷い話だ。

*女将さんが「バカだねぇ」と徳治に同意を求めますが、徳治もとんでもない姿に。普通に返事してますがそれ生きてます?(笑)
泣きながら倒れる志乃。
部屋には沢山の母親と子どもの姿。
しかし襖から顔を出したのは若い頃の女将。

「役立たずは借金も返せない」
「借金のかたに売られた女郎が、やや子を抱えてお勤めができる筈ないだろう」
「生きていくためには、しょうがなかったんだよ」

部屋の中央の水は赤く染まり、子どもをオマージュした沢山のだるまが敷き詰まっています。
子どもの悲鳴と共に引き裂かれる赤い布。
若い徳治も加担していました。
気づけば志乃もその台でうつ伏せに横たわっており、女将が握った両手を振り上げ、何度も何度も打ち付けます。

「やめてぇ!!もう殺さないで!!」

*男が殺された部屋に戻ると、女将と徳治の横から真っ赤な布が波の様に押し寄せ、あっという間に飲み込みながら球体となり、目玉がギョロリとこちらを見ます。
そしてチリンっと傾く天秤。
志乃の前で退魔の剣を掲げる薬売りさん。
座敷童子の真は遊郭の時代に始末された赤子の想いでした。
残るは理です。

*薬売りさんがモノノ怪を斬ろうとすると志乃はそれを止めます。

「やや子達に何の罪があるの!」
「ただ生きたいだけじゃない!」

「駄目だ。相容れない」

「…おいで。一緒に、産んであげる」

ここで音楽が止まります。
志乃はモノノ怪である座敷童子達を産むと言うのです。
薬売りさんは取り込まれるからと止めますが、志乃の母親としての想いは強い。

「私は、私のやや子を産む。それだけ」

そう言ってお腹に張られていたお札を自分で剥がしてしまいます。
すると真っ赤な血が滴り落ち、悲鳴をあげてしまいます。座敷童子達は

「おめでとう!」
「この人がいい」
「優しい、優しい、優しい…」

と、沢山の座敷童子達を背にしたまま、志乃の前に伸びる座敷童子はあなたでよかったと話すのです。
ここの座敷童子の感謝の言葉と、何度も繰り返される

「あなたがいい」

には自然と涙が溢れてしまいました。
志乃も座敷童子にありがとうとごめんなさいを伝えると、座敷童子は笑いながら薬売りさんに斬られるのでした。

*ここでエンディング。
座敷童子の解釈が個人的に難しいのですが、結局座敷童子は産み落とされはしなかった…という解釈かと思います。
実際には産まなかったが、生まれてこれなかった座敷童子達を産んであげると言ってくれた志乃に、座敷童子達はありがとうと感謝し、志乃もまた私の元に来てくれてありがとうと感謝したところでモノノ怪の理…想いが落ち着いたところで斬った…のかなと思っております。あくまで筆者の解釈なので、皆様も自分の目で見て感じて様々な解釈をして頂ければと思います。

*初回のモノノ怪でしたが薬売りさん…変身シーンがなかったですね。
急に姿が変わってましたが、最後の方金色の服を着た長髪の男は薬売りさんです。
今後ちゃんと変身シーンがあるのでそちらもお楽しみに!

筆者が初めて見た時はまだ若かったので座敷童子が怖いなぁ程度の感想でしたが、今筆者は1児の母であり2人目を妊娠している状況で見返しましたら…また感じ方が全然違いました。もう最後は涙と鼻水でズビズビです。
皆さんも何度も見返してもらうと違った感じ方ができる、そんな作品だと思います。

最後までお付き合い頂きありがとうございました。
また次の話もお楽しみに。